この時期恒例の自然部行事として、尾札部川を標高60m付近の大滝まで歩いた。台風第10号の雨による増水が心配されたが予想されたほどの大雨にならず、雨水が河床の堆積物を洗い流し、綺麗な様相を見せてくれた。参加は18名+フリー1名。
南茅部斎場の駐車場の片隅に車を置かせてもらい、準備を済ませてから注意事項確認のため集まる。
9時30分に出発。3日前に会員5名が草刈りをしてくれた林道跡を進む。背丈以上に伸びた藪を掻き分けずに済んだので、ありがたかった。
この時期この場所の常連である「クサギ」。枝葉に悪臭があるため「臭木」と書くが、花は雄しべと雌しべが長く突き出していて繊細な印象を受ける。
こちらは「ジャコウソウ」。茎葉をゆすると「麝香(じゃこう)」のような良い香りがするとして名付けられたそうだが、それほどの香りでもない。
10分ほどで沢に着いた。流れは例年に比べてやや速かったが、水温は思ったほど冷たくなく快適だった。台風がもたらした南方由来の雨の影響だろうか。
所どころで薄緑色の岩盤でできた河床が現れ、ナメの流れの中を気持ち良くザブザブと歩を進める。
最初の休憩地点で見られた「ツリフネソウ(吊舟草)」。
美しい河床の沢を、倒木や早瀬、深みを避けて右岸・左岸に渡り返しながらゆっくりと遡る。
岸辺に面白い形をした青紫色の花があった。メンバーが集まって「何だろうね」と花談義。草丈は80cmから1m。花びらの先が五裂して、一つだけがラン科の花の唇弁のように舌状に長く伸びて濃い斑点が入っている。雄しべ4本と花柱(雌しべ)が、花の中心から長い花弁とは反対方向へ弓形に伸び出している。独特の香りには「シュウマイみたい」「蒲鉾だ」との声。後で参加メンバーAtさんの調べによって、「カリガネソウ」と判明した。弓形に伸びた雄しべと花柱の形が、家紋の「結び雁金(むすびかりがね)」に似ていることから名付けられたとの説も。
上流に向かうにつれて谷が狭まり、岩壁の基部を流れる淵や小さな滝が現れてくる。
ゴルジュ状になった箇所を通り抜けると、大滝は近い。
岩盤の河床を二本の流れが穿って、小さな滝を落としている。
10時45分、標高60m付近の大滝に到着(出発から1時間15分)。約7mの落差で勢いよく流れ落ち、深い滝壺を形作っている。なかなか堂々として、迫力がある。
大滝を背景に恒例の全体写真を撮る。
少し下がった岸辺で休憩を取り、11時5分に下り始めた。復路で見かけた、岸辺の岩の上で日向ぼっこする蛙(エゾアカガエル?)。
「ヤマジノホトトギス(山路杜鵑草)」は、名前に「山路」が付くが、自生地の環境を表すわけではなく、他のホトトギス類二種(「ホトトギス」、「ヤマホトトギス」)と区別する記号のようなものらしい。花にある紫色の斑点を、鳥のホトトギスの胸毛などの模様に見立てて付いた名という。
ピンク色が目立つ「ヤマアジサイ(山紫陽花)」。
大滝から50分ほど下って、沢を離れる。藪がひどかった林道跡も、事前の草刈りのお蔭で快適。
林道跡の途中で見かけた房状に垂れ下がる実は、参加メンバーTtさんに「キブシ(木五倍子)」と同定してもらった。一粒の直径は8ミリ程度。
12時10分、駐車場に到着(下り1時間5分)。挨拶ののち解散し、車ごとに温泉と食事に向かった。
この日は西風に乗って日本海から流れて来る積雲が広がったが陽射しもあり、爽やかな日和だった。心配された虻もほとんど現れず、沢の瀬音と綺麗な河床も相まって、楽しい沢歩きを満喫することができた。